眼内レンズについて
水晶体を切除して代わりに挿入する眼内レンズは主に2種類あり、どのレンズを挿入するかは患者様ご自身が御決定いただけます。種類としては、保険適用の単焦点眼内レンズ、自己負担が若干重くなる多焦点眼内レンズです。(治療費に関してはこちら)
単焦点レンズと多焦点レンズの違い
単焦点レンズは1つの距離にピントを合わせるのに対し、多焦点レンズは2つ以上の距離にピントを合わせることができます。このため、単焦点レンズはピントの合う位置が狭いため、メガネの依存度が高くなりますが、多焦点レンズはピントの合う位置が広いため、メガネの依存度が減ります。
多焦点レンズは術後に暗いところで光が滲んだりぼやけてみえる“ハロー”“グレア”といった現象が起きる場合があり、慣れるまでは強く違和感を感じることがあります。
また、多焦点レンズの適応は眼に白内障以外の疾患がないことが確認できた患者様に限ります。
多焦点眼内レンズについて
白内障手術で挿入するレンズは、“単焦点眼内レンズ”と“多焦点眼内レンズ”の二種類があります。単焦点眼内レンズは、保険適用の白内障手術で用いるレンズです。患者様のご希望に合わせ、近方、遠方、中間距離のうち1箇所の距離に焦点を合わせます。合わせた焦点距離以外を明瞭に見たい場合には、眼鏡が必要です。
一方、多焦点眼内レンズは、近方、遠方、中間距離のうち複数箇所に焦点を合わせられるレンズです。保険適用にはなりませんが、術後に眼鏡やコンタクトの装用を減らして生活を送ることが出来る、画期的なレンズです。
このうち、選定療養制度利用可能なレンズ、完全自由診療対象のレンズがございます。
選定療養制度とは、白内障手術の費用は保険適用となり、多焦点眼内レンズのレンズ代のみ自己負担になる制度です。自由診療の場合は手術費用とレンズ費用全て自己負担となります。いずれも医療費控除は対象となります。
当院では、以下の多焦点眼内レンズをお取り扱いしております。
選定療養
TECNIS PureSee(テクニス ピュアシー)
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のEDOF多焦点眼内レンズは、焦点深度を拡張することで、単焦点レンズと同等の見え方の質を維持しながら、老眼の改善も期待できる製品です。
快適な視力と自然な見え方を両立したい方に適しています。
メリット
コントラスト感度が単焦点眼内レンズ並み良好であること、ハロー・グレア・スターバーストなどの異常光視現象が単焦点眼内レンズと同等の水準に低減されていることが特徴です。
遠方~近方50cm程度までクリアな視界を得ることができます。
デメリット
手元30-40cmを見るときには老眼鏡の装用を前提としています。
※ハロー…
光源の周りに光の輪が見える現象
※グレア…
強い光がまぶしく見える現象
※スターバースト…
光源から放射状に光の線が見える現象
Vivinex Gemetric(ビビネックス ジェメトリック)
HOYA株式会社が開発した多焦点眼内レンズは、国内企業として初の回折型(三焦点)タイプです。
遠方・中間・近方の3つの距離にピントを合わせることができるため、眼鏡の使用頻度を減らしたい方に適した選択肢です。
メリット
中間(80cm)/近方(40cm)と比較して遠方のエネルギー割合が高く、回折部が中心3.2mm径内に設計されていることから、遠くの見え方を犠牲にせず、中間~手元の視界を確保するための光配分になっています。
瞳孔径が大きくなると遠方のエネルギー割合が大きくなるデザインであり、多焦点レンズにありがちな夜間の遠方視力低下が起きにくくなっています。
また、素材は従来から使用実績があるHOYAの眼内レンズ(Vivinex multiSert)と同じ信頼性の高い疎水性アクリルで、後発白内障やグリスニングなどの術後変化が少ないことが期待されています。
デメリット
その他の回折型レンズと比較し、やや手元の視力は弱めです。従来の多焦点眼内レンズよりも低減はされているものの、単焦点レンズと比較して異常光視現象やコントラスト感度の低下が起きる可能性があります。
自由診療
Intensity(インテンシティ)
Hanita Lenses社の眼内レンズは、世界初の五焦点タイプで、多焦点レンズの利点を最大限に引き出しながら、これまでの課題を軽減した、バランスに優れた設計が特長です。
視覚の質と快適性を両立したい方に向いた選択肢といえます。
メリット
インテンシティは光効率を最大限に利用し、最適化された光エネルギーの配分により、遠方・遠中・中間・中近・近方(40cm程度まで)のあらゆる距離で良好な見え方が得られます。
従来の回折型(2焦点、3焦点)眼内レンズでは使用できなかった部分を使用可能にしたHanita社独自のアルゴリズムです。このため、日常生活の多くの場面を裸眼で過ごすことができます。
また、多焦点特有の見えづらさの原因となる異常光視症も非常に少ないと言われています。独自の回折構造によって、光エネルギーのロスを6.5%まで抑えているため、夜間の光のにじみやまぶしさ(ハロー・グレア)、コントラスト感度の低下など多焦点眼内レンズ特有のデメリットが、従来の回折型3焦点と比較しかなり抑えられています。
このため、夜間の外出や運転が多い人にとってもおすすめできます。現在市場に流通している回折型レンズでは、最も優秀なレンズといえます。
デメリット
完全自費診療のため、選定療養と比較しても高価なレンズです。また40cmより近方ではやや視力が弱まるため、長時間の手元作業時には眼鏡が必要となる可能性が残ります。
Mini WELL(ミニウェル)・Mini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)
MedTech社の眼内レンズは、焦点深度拡張型(EDOF)の2枚を1セットとして両眼に挿入する「ウェルフュージョンシステム」という独自のコンセプトを採用しています。
両レンズが互いの性能を補完するよう設計されており、視覚の質と快適性をより高めることが期待される構成です。
メリット
中間距離~遠方までがよく見えるMini WELL、中間距離~手元(30cm程度)がよく見えるMini WELL PROXAを組み合わせることで、遠方~手元まで“連続して”スムーズに見ることができます。
動くものが見えやすい(距離感を掴みやすい)ため、ゴルフをはじめさまざまなスポーツにアクティブに取り組まれる方におすすめです。異常光視現象が生じにくく、夜間の運転もしやすいと好評です。
デメリット
完全自由診療となるため費用が高額となること、また左右で1セットとするため、片眼にすでに白内障手術を受けている方は適応となりません。
選定療養と自由診療について
選定療養とは、健康保険適用外の治療を追加費用負担することで、保険適用の治療と合わせて受けることができる制度で、2020年4月から多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が選定療養で実施可能となりました。
白内障手術自体は通常の健康保険適用の手術で受けていただくことができ、レンズ費用の差額分のみが自己負担となるものです。従来であれば、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は手術費用・レンズ費用ともに全額自己負担でしたが、この制度により患者様の負担が軽減されるようになりました。
しかし、選定療養を活用する場合、選択できる多焦点眼内レンズは限られたものが対象になります。対象となるレンズには、2焦点眼内レンズと3焦点眼内レンズがありますが、国内で承認を受けたレンズに限られてしまうため、十数年前に発売されたレンズも含まれています。近年発売された新しいレンズは対象外となるものが多いので、どの多焦点眼内レンズも対象となるわけではありません。当院では最新の性能の高いレンズを完全自由診療として取り扱っており、このレンズを希望される場合は手術費用も含めてすべて自費となります。